温泉の枯渇の問題でございますが、これはまあ私、温泉よりもむしろ都市の地下水の問題についてはかなりいろいろデータ集めて知っているつもりでございますが、こういう例ございました。成田市であるときに台風がございまして、それで電気がとまりました。それで成田市営水道はこれは地下水を水源としてモーターでくみ上げているわけでございますが、当然水をくみ上げるモーターがとまりましたので水道とまりました。これがちょっと時間が長くかかりました、直るまで。そうしたらいままでかれれておった浅井戸の水が少しわき出てきたということがございまして、ここでもやはり深層地下水、成田市営水道の水源は大体百メートルあるいはそれより深いところにございますが、浅いところの水と深いところの水とはやはりお互いに関係あることわかりまして、深井戸の水のくみ上げをやめると浅いところの井戸の水はかれずに済むというようなことが、やはりそういうたまたま台風でもって電気が停電して、深井戸の水をくみ上げるモーターがとまったなんというときにそういうことがあったわけですね。それから先ほど申しましたように田子の浦の例もございますし、深井戸の水のくみ上げ量を減らしましたら、たちまち泉がわき返ったということもございました。それで従来は浅いところの井戸水、浅いところの地下水はたとえば粘土層のように水をなかなか通しにくい地層、つまり不透水層と申しておりますが、不透水層がありまして、それがお盆の底みたいの役割りを果たしまして、浅いところの地下水は粘土層より下には通過していかないんだと、浸透していかないんだという考え方がよくございましたね。したがって深層地下水と浅層地下水とはあんまり関係しないんだという考え方があったようなんですが、これがそういうことではございませんでしてね、深井戸をたくさん掘りますと粘土層のようになかなか水を通しにくい地層すらも浅いところから深いところへどんどん水がやはりしみ出していく、しみ通って漏斗状に吸い込まれていくというようなことがわかってまいりました。そういうこと考えると当然これは地下深いところ、先ほど申したかと思いますが、大岳の場合は大体数百メートルのところから蒸気を取っておりますが、蒸気と熱水。それから八丁原になりますとちょっと深くなりまして千メートルになりますけれども、そういういずれにしても深いところから熱水及び蒸気を取っているわけでございますね。蒸気をタービンで回して熱水はいままで捨てて、その捨てるのがいかぬということで環元井で戻したわけでございます。いずれにしても深いところから取っております、蒸気あるいは熱水を。ただ、その深いところからくみ上げるということがやはり深層地下水の水圧及び水量を減らすことになって、それが浅いところから深いとこへ地下水をかなり急速に移動させることになるということになりますと、浅いところにあります地下水がかれてそれが地熱にあっためられて温泉水になっている場合には、地熱発電をやれば温泉はかれるというのは理の当然で、私まだ例はよく知りませんが、先ほど申しましたように鬼首ではそういう例がすでにございました。それから大岳の場合ですね、これは土地の温泉街の有力者と言われる人からの談話でございますけれども、大岳の地熱発電所が営業運転を始めたあたりからやはり泉源のうちの一部がかれ始めた。それから筋湯温泉の泉源の一部がかれ始めた。それから筋湯温泉のそばに疥癬湯というお湯が、やはり温泉がございます、疥癬湯。この温泉も最近ではほとんどかれているということだそうでございまして、これはひょっとしますと温泉宿の乱造によって、結局お湯をたくさん取り過ぎたためにかれたということも考えられましたので、そのことも質問してみたんでございますけれども、いやそういうことではないんだということを言っておりました。これは私自身まだそういう詳しい調査をしたわけではございませんので、やはりその筋の専門家の方がそういう事実がもしあるとすれば、その理由は何かということについてやはりお調べになられたらというふうに思いますが、まあ私は少なくともそういう問題提起はしたわけでございます。これは先ほど申しましたように、繰り返しになりますが、都市あたりでは深層地下水と浅層地下水との関係、これは実に最近は明確になっておりまして、その理論を温泉と地熱発電の関係に当てはめますならば、地熱発電の開発は温泉をからすことにまずなると考えるのが理の当然であり、もし温泉がかれることにならない場合には、それなりの特殊な説明がむしろ必要なんじゃないかというふうに思います。ということで、地熱開発の促進の動きが国会の一部でございましたときに、やはり全国の温泉業者が温泉がかれるからということで地熱開発に反対ののろしを上げたということについては、私は地質学あるいは地層学、地下水学の方から申しますとこれは一理があるというふうに思います。
それからちょっと先ほどの表先生の私の考えに対する御批判にちょっとコメントさせていただきたいと思いますが、確かにデンバーの場合は圧入で地上から地下へ廃水を圧力をかけて入れているわけでございますが、大岳の場合は自然に吸い込ませるということでございますので、環元井に入れるときの入れ方は確かに違います。このことは六月二十七日に出ました毎日新聞の記事で安武秀雄大岳地熱発電所の所長がすでにそのことを言っておられます。確かに環元井に入れるときの入れ方は違いますけれども、狭い空間の岩石の割れ目に一たん入ってしまいますと、水量が増せばやはり水圧も増すだろう。川崎の場合は圧入したどころかそれから自然にしみ込ませたどころか、そういうものじゃ全然なくて、ただ地下水のくみ上げを規制しただけで地下水位がぐんぐん上がって、陸地を持ち上げるまでの力になったということで、地下水位が上がりますと、地盤さえもあそこの場合は洪積層、沖積層でずっとやわらかい地層ではございますけれども、地盤を持ち上げるぐらいの力がございますので、何も環元井に入れるときに圧力かけたかどうかということは違うと言えば違いますけれども、狭い岩石の割れ目の空間の中にやはり次から次へどんどん、先ほどお話ししましたように、大岳の場合は時間当たり三百五十トンでございますね。八丁原の場合はいまのところまだ建設中でございますので、一本の環元井だけで将来四本できるようでございますが、二百五十トンという量の水を入れておりますので、こういうことで次から次へ地表から地下へ水を環元井によって熱水を入れていけば、やはり地下の深いところの狭い割れ目の空間の中ではその水はやはりかなりの水圧を持つことになるだろうということで、環元井に入れるときの入れ方、圧入するかあるいは自然に吸い込ませるかということは私としては余り決定的なファクターにはならぬような気がするんです。